ニュースの概要
三菱商事が、フィリピンの大手財閥に約700億円を出資する方針だと報じられた。財閥は不動産や小売り、通信、金融など幅広い事業を抱えている。注目点は、国民的な決済アプリ「GCash」との連携である。同アプリは銀行口座を持たない層にも広がり、送金や買い物、貯蓄までを担う生活の入り口になっている。商社はこの入り口を押さえ、消費や物流、金融を一体で育てる狙いとみられる。背景には、中国への依存を下げたい日本企業の動きがある。人口が1億1千万人を超え、平均年齢が若いフィリピンは、次の成長市場として存在感を増している。
引用元: 三菱商事、フィリピン巨大財閥に「700億円投資」の狙い…国民的アプリ「GCash」連携で見据える「脱中国」と新・成長戦略(ゴールドオンライン)
分析・見解
700億円は財閥の販路と決済網を買う投資
三菱商事が狙うのは、工場や鉱山のような単独の資産ではない。財閥が持つ販路、店舗網、顧客データ、そして決済アプリの利用者をまとめて取り込むことだ。
フィリピンの財閥は、不動産、小売り、銀行、通信が同じ傘の下にある。たとえば住宅を売る会社と、住宅ローンを出す銀行と、支払いを受ける決済アプリが連動する。商社が出資すれば、この循環の中に日本企業の商材やノウハウを差し込める。単に資金を出すのではなく、経済の仕組みごと買う発想である。
GCashが国民の財布になった理由
GCashは、携帯電話の通信会社を母体にしたアプリである。銀行の支店が少なく、口座を持たない人が多い国で、スマホ一台で送金や支払いができる点が受け入れられた。利用者は9千万人規模ともいわれ、人口の大半に迫る。
海外で働く家族からの仕送りがこの国の経済を支えていることも追い風だ。仕送りは国内総生産の1割近くを占める。これを手数料の安いアプリで受け取れれば、家計の使えるお金が増える。決済の記録がたまるほど、少額融資や保険といった次の商品も作りやすい。ケニアのM-Pesaが同じ道をたどった例と重なる。
脱中国の本音は、調達先ではなく売り先の分散
脱中国という言葉は、工場の移転だけを指すと思われがちだ。しかし今回の投資は少し違う。中国に頼るリスクを、売り先の分散でも下げようとしている点が見どころである。
中国の消費が伸び悩む中で、日本企業が成長を取りに行く先は限られる。インドネシアやベトナムは競争が激しい。フィリピンは英語が通じ、若い働き手が多く、消費の伸びしろが大きい。調達と販売の両方で、中国以外の軸を育てる動きとして読むのが自然だ。
落とし穴は、規制と政治の揺れ
もちろん課題もある。財閥は創業家の影響が強く、意思決定が外から見えにくい。通貨ペソの下落や、台風などの自然災害、政権交代による規制の変更も無視できない。
過去には、日本企業が東南アジアで現地の大手と組みながら、利益を十分に取り込めなかった例も少なくない。出資比率が低いと、経営への発言力が弱いからだ。今回も、少数株主としてどこまで中身に関われるかが成否を分ける。
ビジネスへの影響
個人投資家は商社の動きを先行指標にできる
三菱商事のような大手が現地の財閥に資金を入れるのは、その国の中長期の成長を見込んでいる証拠である。フィリピンの不動産投資を考えている人にとっては、国全体の信用が高まるという追い風になる。
ただし、商社の投資と個人の物件投資は別物だ。商社は決済や小売りまで含めて収益を作れるが、個人は家賃と売却益に頼る。企業の動きは需要の方向を知る材料として使い、物件ごとの利回りや立地は別に精査する必要がある。
決済の電子化が家賃回収と管理を変える
GCashのようなアプリが普及すると、家賃の集金や管理費の支払いが手軽になる。現金払いや銀行振込に頼る国では、滞納の把握が遅れがちだった。アプリで記録が残れば、入居者の支払い状況が見えやすくなる。
海外から物件を持つ日本人にとって、現地管理会社の選び方も変わる。電子決済に対応しているか、送金手数料と為替の扱いが明確か。この二点は、契約前に確認したい。
今すぐ確認したい三つのチェック項目
一つ目は、投資先の都市が財閥の開発エリアと重なっているかである。大型開発の近くは需要が安定しやすい。二つ目は、為替の変動に耐えられる資金計画を組んでいるか。ペソ安が進んでも返済できる余裕が要る。三つ目は、出口戦略である。売却先が現地の富裕層か、外国人かで価格の動き方も変わる。
大きなニュースに乗せられて急ぐのではなく、数字と契約条件を丁寧に比べる姿勢が、結局は損失を小さくする。
