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ベトナムのリゾート不動産市場で、長く投資の重荷となっていた法的な不確実性が少しずつ縮小している。観光用物件の権利関係や開発、運営を巡る制度が段階的に整い、事業者が計画を立てやすい環境に近づきつつあるためだ。観光客の増加に対して、観光アパートメントを含む宿泊施設の供給はなお十分とはいえない。今後の成長を左右するのは、物件数を増やす速さだけではない。許認可の確認、安定した管理、滞在体験の質、そして購入者や投資家への収益説明を一体で設計できるかが、市場の信頼を決める。
引用元: ベトナムのリゾート不動産市場、法整備進展で新たな成長局面へ(The Investor Vietnam)
分析・見解
法整備の進展は物件価格より市場の信頼を変える
ベトナムのリゾート不動産は、観光需要が伸びても制度面の不透明さが投資を抑えるという矛盾を抱えてきた。土地利用期間、建物の権利、用途変更、販売後の運営責任が案件ごとに異なり、買い手は広告上の利回りだけでなく、何をどの期間保有できるのかを確認しなければならなかった。法制度が段階的に整えば、最大の効果は短期的な価格上昇ではなく、取引の比較可能性が高まることにある。
ただし、法律が整ったからといって全物件が同じ安全性を持つわけではない。土地の用途、投資許可、建築確認、完成後の用途、管理契約は別々に確認する必要がある。制度の改善を市場全体の保証と誤解しない姿勢が重要だ。
観光客の増加に宿泊施設の供給が追いついていない
ベトナムでは海岸リゾートや島しょ部を中心に観光客の回復が進み、客室需要は大型ホテルだけでなく、家族旅行や長期滞在に向く広い部屋へ広がっている。観光アパートメントはこの隙間を埋めやすい。キッチンや洗濯設備を備えれば、ホテルとは異なる使い方を提案できるからだ。
一方で、供給不足は単純な建設不足ではない。繁忙期だけ稼働し、閑散期に空室が増える地域では、部屋数を増やしても収益が安定しない。空港からの移動時間、周辺の飲食店、医療機関、観光施設との距離まで含めて、滞在先としての価値を判断する必要がある。
収益を分けるのは立地より運営データの質になる
同じリゾートでも、予約経路、清掃の速さ、価格の調整、苦情への対応で稼働率は大きく変わる。今後は、販売時に示す想定利回りより、月別の稼働率、平均宿泊単価、管理費、修繕費、税金を含む実績の開示が重視されるだろう。特に複数の予約サイトを使う場合は、二重予約を防ぐ仕組みと、価格を需要に合わせて変える仕組みが欠かせない。
独自の視点として、法整備の恩恵を最も受けるのは、豪華な施設を建てる企業とは限らない。権利書類を整理し、運営実績を継続的に記録し、購入者へ分かりやすく説明できる企業ほど、資金調達や再販売で有利になる。透明性そのものが、物件に加わる新しい価値になる。
地域ごとの差が投資判断を難しくする
ダナン、ニャチャン、フーコックなどは知名度が高いが、観光客の国籍、滞在日数、航空便、開発規制はそれぞれ異なる。国際線の増減や季節風の影響も、売上を左右する。全国平均の観光統計だけでは、個別物件の収益性を測れない。
今後は、行政の許認可情報と予約実績、周辺施設の開業状況を重ねて見る必要がある。市場全体の成長を前提にするのではなく、平日と休日、繁忙期と閑散期を分けた収支計画を作ることが、過度な期待を抑える最も有効な方法になる。
ビジネスへの影響
開発企業は販売前に権利と運営責任を一枚で示す
事業者が最初に取り組むべきは、物件の魅力を増やすことより、権利と許認可の確認手順を見える形にすることだ。土地利用の目的、保有できる期間、建物の引き渡し条件、営業許可、管理会社の責任範囲を一覧化すれば、販売後の紛争を減らせる。契約書だけでなく、購入者が理解できる言葉で説明する資料も必要になる。
また、売却時に提示する利回りは、満室を前提にした数字では不十分だ。稼働率を低く置いた場合、修繕費や家具交換費を含めた場合、管理会社が変わった場合の三つ程度の試算を示すと、投資家は判断しやすい。短期販売を優先して過大な収益を示すと、市場全体の信用を損なう。
投資家は物件ではなく運営体制を比較する
購入を検討する企業や個人は、眺望や販売価格だけでなく、誰が予約を受け、清掃し、修理費を負担し、売上を報告するのかを確認すべきだ。管理契約の期間、解約条件、手数料、修繕積立金、稼働しない期間の費用を事前に把握する必要がある。現地の登記、許認可、契約書は、独立した専門家を通じて確認したい。
判断では、表面利回りより手元に残る金額を見る。購入費に加え、内装、家具、税金、送金費用、空室、為替変動を含め、三年から五年の資金計画を作ると現実に近づく。売却しやすさも重要で、外国人向けの再販売市場や所有権の移転条件が曖昧な物件は、価格が安くても出口で苦戦しやすい。
運営会社には地域別の稼働計画が求められる
管理会社は一律の価格設定を改め、航空便、連休、天候、学校休暇など地域固有の要因を反映した販売計画を作るべきだ。宿泊者の国籍や滞在目的を把握し、家族向け、長期滞在向け、法人出張向けに商品を分ければ、繁忙期以外の需要を掘り起こせる。
市場が拡大するほど、建てた後の差が大きくなる。予約率、平均単価、清掃時間、修理対応時間、口コミ評価を毎月追い、改善結果を所有者に報告する体制が、資産価値と信頼を同時に守る。法整備を成長の入口にするには、販売、管理、情報開示を別々の業務にしないことが鍵になる。
